製作委員会 小谷陽子

製作委員会 小谷陽子

大学が演劇科で演劇を始める。大学と並んでENBUゼミKERAクラスにも通う。
その後、フリーの役者として小劇場で活動した後、事務所に所属し映像方面でも活動。
8年ほど前に知り合いと演劇系のイベントに出ることになった時にほぼアクシデント的に台本を書くハメになり、その後稽古用の台本などを書くようになる。
役者として活動する一方、5年前から自ら主宰する演劇ユニット「製作委員会」を始める。現在も舞台・映像出演しながら「製作委員会」を元気に細々と継続中。

製作委員会
2010年ころ、小谷陽子が都内で立ち上げた演劇ユニット。いちおうユニットと言ってはいるが実際は劇団ひとりならぬ製作委員会ひとり。現在もゆるゆると活動。

製作委員会公演履歴
2010年10月20日〜10月22日「港町殺人」作/藤尾京子
2012年1月20日〜1月22日
「いちご、マスゲーム、妄想」
2012年11月30日〜12月2日
「悪癖」
2013年5月30日〜6月1日
「がんばれ美香子〜なにそのタイトルやめてよ」
2013年10月19日〜26日
「JFK」
2014年8月1日〜8月3日
「Starting Block」byセミナーズ2013
オムニバス公演に「No more bet」で作/演出/出演として参加
2015年4月7日〜12日
「尼ちゃん」
自主映画
「OH!ぱいパニック」
2015年11月28日アミューあつぎでのイベントで上映予定

 

製作委員会というユニット名は一風変わった名前だ。代表の小谷曰く、その意味するところは、「○○製作委員会」、すなわち、毎回その時の公演の作品名が隠れているのだという。その名前の付け方からも、微妙な力の抜け具合を感じる。
製作委員会がこれまで上演してきた作品(主に小谷作)の作風は、ユニット名の由来に象徴されるように、中心がありそうで、ない。捉え所がなく、意味を求めようとすると掌からこぼれ落ちていく感じなのだ。
「スタイリッシュでも、トレンディでもない。くだらなくて、何も残らないものを目指して作っている」
と小谷は言う。もともとはコメディが好きだが、大笑いするよりも、クスッと笑えるものを作りたいのだそうだ。

そんな製作委員会の作品には、根底に流れる「隠しテーマ」がある。
20代の話や、普通の会社員の話は書かないというのだ。
「今の20代や、普通の会社員のことって、分からない。分からないことは書けない」
と小谷は言う。しかし、それだけではないだろう。彼女の興味関心は、もう少し上の世代にあるようだ。
「30代から40代、50代になったら、もう人生動かない、この後の急展開はないだろうと思う人が多い。面倒くさいし、体力がないということかも知れない。だからどちらかというと、安定を求める方に向かう。でも、ここで固まっちゃうのは辛くないですか?」
自身も30代の小谷は、自分自身の活動にも絡めて言う。
「それは嫌だなって。希望がない。ワクワク感がないというか。何が起こるか分からないと思ってないとつまらない」
「これからは高齢化社会になる。平均寿命が95歳くらいになるかも知れない。そうなったら、30歳超えても、いきなり職業が変わるとか、そんなことはあり得ないって言えますか?だったら、皆さんも何でもやっていきましょう。そのことをお客さんには伝えたい」
くだらなさの追求は、この考え方から導き出された製作委員会の作品の重要な方向性であり、根本を貫く思想だ。
「『この年齢(とし)になっても、こんなくだらないことをやってる』っていうのを書きたい。『この人達、こんなくだらないことをしてバカだな。俺も似たようなもんだけど。これでいけるんだったら、俺ももっといけるだろう』と思って欲しいし、そういう部分を引き出していきたい」
とはいえ、それを声高に主張するわけでもない。
「お客さんがリラックスできる、感動的よりは終始くだらないものを」
という姿勢は一貫している。

また、製作委員会の作品には、ホストやその店の経営者等、小谷の表現を借りれば「隙間産業」の人間が多く登場するのも特徴だ。「JFK」や「尼ちゃん」で舞台になっているお寺も、一般人の世界ではない。その理由を彼女は、
「自分が隙間産業しか知らないからかもしれません。普通の正社員の人たちの美味しいところと不味いところ、という感覚があまり分からないというか。もし分かったとしても書きたくなるのかどうか…」
と言う。彼女にとっては、人生における「意外性」が大事なのだが、それを象徴するものとしてこうした人間達の世界がある。そして、私達は、何かの拍子で自分がそちら側の人間になるかも知れない。その可能性はゼロではない。私達は、製作委員会の舞台を通して、そうした世界をのぞき見ることができる。

製作委員会の活動の他に、小谷は日本劇作家協会主催の「戯曲セミナー」の卒業生有志で構成する「セミナーズ」の公演に、作・演出で参加している。こちらの作品は、オムニバスの1本ということもあり、短編だ。また、「場転なし」「少人数」といった縛りもある。こうした短編の場合は、製作委員会の作品とは違った作り方をするそうだ。
「書かないように、書かないようにする。お客さんに委ねるところが大きい」
さらに、次回のセミナーズの作品は、小谷作品には珍しく「ちょっと真面目なもの」になる予定だとか。新たな「小谷ワールド」の予感。こちらも楽しみである。

役者としても、彼女は製作委員会の作品に出演し続けている。それは、演出として外側から関わるだけではなく、自ら作品の中に入り込んで、その世界を構築していきたいからだという。言ってみれば、「くだらなさ」を自らの演技でも表現しているわけだ。
「(人生は変化があっても)思っているより全然イージー。『あら、こんなもん』ていう感じ」
「これからもバカみたいことをやりたい」
そう繰り返す彼女。そのキリッとした顔立ちからは想像がつかない。
「根が子供なんでしょうね。顔で得してます。『喋ってないと頭良さそう』って言われる」
そう言いながら、彼女は笑った。彼女のしなやかさがにじみ出ているような、柔らかな笑顔だった。

「ネジが1本抜けたような感じ」(小谷)である作品を見て、観客は、自分がネジを締めすぎているのではないかと無意識のうちに気付く。若さを失って、無難に凝り固まっていくことを拒否し、柔軟に、力を抜いて、可能性を信じて人生を送ろう。そんなメッセージが、製作委員会の舞台には込められているのだ。
その意味では、これは小谷流の、普通の形とは違う「人生の応援歌」といえるのかも知れない。

製作委員会は30代、40代の役者を求めているという。
息苦しい日常に疲れ、力を抜いたバカバカしさの表現の中に身を委ねてみたいと密かに思っている役者の方は、連絡を取ってみるといいだろう。
そして、同じように疲れ果て、今後の人生に漠然とした不安を抱いている人は、どの世代であっても、製作委員会の舞台に足を運んで、くだらなさのシャワーを浴びよう。そして、自分のネジを一本抜いてみれば、今までと違った人生が見えてくるかも知れない。
(文中敬称略)

 

製作委員会ウェブサイト

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