言葉の動物

作品のテーマは人間、そして生きるということ。上演後にお客様お一人お一人の世界を見る視点が変わっていたら嬉しいです。

それが私たち言葉の動物のコンセプト。

演者については目指す、諦めるの2択ではなく、もっと気軽に、ただ感じたものを形にする場として存在。

kotoba_dobutsu01

メンバー

西口千草 〜 作・演出

西口卓男 〜 制作、照明

kotoba_dobutsu02

「言葉の動物」は2012年に活動を開始した演劇ユニットである。少し風変わりなユニット名は、西口千草が偶然聞いていたラジオで男性パーソナリティが

「人間は言葉の動物だから」

と言ったことにインスピレーションを得たという。スタートはメンバー2人による朗読だった。その後は朗読公演と、役者を交えた演劇公演を交互に行っており、創立以来両方合わせて14回の公演を行っている。実に年3回以上のペースだ。

そんな言葉の動物の前身は、実は漫才だったというから驚きだ。西口はよしもと東京クリエイティブ・エージェンシーの出身で、メンバー2人は漫才コンビだった。とはいえ、西口はお笑いに行く前には東京アナウンス学院で演劇にも触れていた。その西口がお笑いに区切りをつけた後、原点に戻ったのが言葉の動物というわけである。

「でも、(お笑いの経験は)書くということに役に立った。『新ネタを書け、新ネタを書け!』でやってきたので、普通に芝居だけをやっていたよりはよかった」

そして、言葉の動物ではオリジナル作品にこだわるという。

「ここでは自分の思っていることを打ち出していきたい。ある意味、演劇じゃないですね。“主張”というか“口演”みたいなもの」

kotoba_dobutsu03

そんな作・演出の西口の脚本はどのように生まれるのだろうか。

「言いたいことがふわっと湧いてきたり、ワンシーンが湧いてきたり、台詞が湧いてきたり。最初断片が湧いてくる」

今現在も複数のアイデアを持っている。そういった断片が次々と、まるで夢を見るように出てくるという。枯渇することはないそうだ。僕も脚本を書く人間だが、とても羨ましい限りである。

その西口は、子供時代は妄想好きだった。そして、今とは正反対に、人前ではひと言も喋らないような子供だったという。

「本当は表現したいという欲があったんですけど、子供の頃は何かを表現すると稚拙なものなので、批判があったり笑われたりということがある。そうすると、自分の思っていることを口に出して言うなんて、という思いがあった」

しかし、そんな子供時代を過ごした環境が、西口のその後に大きな影響を与えることになる。

「過疎の村だったので、学校に通うのに、駅まで子供の足で40分位かかる。1人で黙々と歩いているんですけど、漫画やゲームは学校に持ってくるなという時代だったから、娯楽と言えば道を歩きながら物語をこしらえるくらい」

「娯楽もなかったけど、『小学5年生』みたいな雑誌はだけは買っていた。それを自宅でぼろぼろになるまで声を出して読む。ドラえもんとのび太としずかちゃんとジャイアンと声を変えて。父がラジカセを買ってくれたので、それを吹き込んで、『もうちょっと声を高くしよう』とか、誰にも頼まれてないのに、自分で芝居をやってそれをチェックしてた」

こうした時代の体験が、西口の原点になっていることは間違いない。内に秘められていた表現欲と創造力が、その後の活動に繋がり、言葉の動物を産みだしたのだ。

kotoba_dobutsu04

言葉の動物の作品で重視しているのは「引っかかりのある言葉を使うこと」である。9月に上演した作品のタイトルは「シュレジンガーの猫が鳴く」。確かに、すっと入ってくると言うよりは、意外性があって引っかかる言葉だ。台詞もそうだが、一風変わった言葉をチョイスし、並べ方を工夫することで観客の興味を引きつけるのが狙いだ。

「他人様の芝居を見に行くと、よくこんな日常(を描くシーン)から始められるな、と思っちゃうんです。私は怖くてそういう台本は書けないんですよ。それで、印象的な動きや言葉を使うんです。人間は単調なリズムの中に置かれると寝てしまう。」

それは演出にも関わってくる話だ。出演者が全員同じ音ではなく、様々な音を出すことによって1つの世界を成立させる合奏のように、またシーンごとに緩急をつけることで観客を退屈させずに、作品世界に引き込む。

「演出していてよく『驚かして!』とか『切り裂いて!』って言いますね。」

同じ人間でも、年をとり、時代が変わり、環境が変われば、考え方や行動も変わっていくものだ。西口はそういった人間や社会の流動性に着目し、それを舞台に反映させようとしているのである。

 

ところで、西口が関西出身という割には、言葉の動物は全く関西にはこだわっていない。お笑いでも、むしろ東京のお笑いの方がスタイリッシュな感じがして憧れていたのだという。劇作でも、たまに関西人が登場する位で、所謂「関西文化」というものを土台にはしていない。それはおそらく、特定のバックボーンがなくても分かるような、ある種の普遍性を指向しているからだと思う。もともと郷土愛が薄かったという西口である。大袈裟に言えば「コスモポリタン」のような、共同体と共同体の中間に立ち位置を見出しているということなのではないだろうか。言葉の動物というニュートラルな団体名にもそれが表れているように思う。

 

そして、言葉の動物の大きな特徴の1つがチケット料金の安さだ。前述の池袋演劇祭参加作品では2000円の設定だった。因みに、最近の小劇場の料金は前売りで3000円が相場である。これは西口がこだわる「昭和料金」。かつての小劇場ブームの時代、確かに料金の相場は2000〜2500円であり、3000円以上出せば紀伊國屋ホールの芝居が見られた。今は人件費や小屋代等様々なものが高騰しているが、そんな中でもスタッフを参加者がやったり、他の劇団の使用済みの装置をもらい受けたりと、「企業努力」でコストを下げることによって低料金を実現している。参加費も安いそうだ。そうして敷居を低くすることで、より多くの人を劇場に呼び、また経済的に苦しまずに舞台に出演できるようにしたいという確固たる思想と信念が見える。確かにその方が結果的に活動を長く継続していくことができるだろう。

 

なお、言葉の動物には「吹き出し君」「ヒヨちゃん」というキャラクターがいる。ゆるキャラのように中に人が入れるという本格的なものだ。これも遊び心の1つであろう。小劇場の劇団でゆるキャラがいるところはまずない。このあたりも意外性を追求し、人をびっくりさせるこの団体ならではである。今後、さらにこのキャラクターを展開していけると面白いと思う。グッズを作ったら結構いけそうでもある。
独自のスタンスでエネルギッシュに活動している言葉の動物。汲めども尽きせぬ西口の創作から、次はどんな作品が産み出されるのだろうか。見る人の世界を見る視点を変えるような作品をひっさげた言葉の動物の、言葉に対する挑戦はまだまだ続く。朗読公演とも相まって、今後の活動が注目される。

kotoba_dobutsu05

言葉の動物ウェブサイト

Facebook Comments