無銘鍛冶

無銘鍛冶
1999年11月結成。前身、演劇集団アコースティック・アライヴの主宰、酒井徹によって、「芝居よりも殺陣」「カッコ良いかつ安全な殺陣」を追求するべく誕生した。現在は月4回の定期稽古の他、各学生演劇団体への出張稽古を行っている。

メンバー

  • 代表・師範  酒井徹
  • 師範代  吉岡勝
  • 師範代補佐  佐藤和明

「無銘鍛冶」とは

「無銘鍛冶」とは、代表の酒井曰く、「銘の入っていなくても、銘刀と同じ位鋭さと切れ味を持った刀のような殺陣」を作るという心意気を込めた名前である。団体の公演の他、外部団体の殺陣の振り付けも行っている。以前、息吹のユニット・Favorite Banana Indiansでも殺陣をつけてもらったことがあった。この時は、出演者の殆どが殺陣は初体験であったため、所作を一から指導していただいた。とても丁寧な指導だったのを覚えている。

mumeikaji02

酒井自身も、学生時代から時代物(主に新撰組に関するもの)が大好きで、役者の素養のひとつとしても殺陣をやりたいと思い、始めたという。その殺陣への思いの強さが、殺陣中心の集団(ユニット名は「エアリズム」)の創設に繋がった。
「アコースティック・アライヴの時は、皆さん役者なので、芝居を見せたいから、芝居の練習がしたい、殺陣の稽古はそんなにやらなくていいんじゃないかというご意見をずっといただいていた。そのへんが自分の中でずっとモヤモヤしていた。無銘鍛冶にしてからは、殺陣の練習はきっちりやる、その上で芝居の練習をやる。殺陣を主体にするユニットとして立ち上げたので、殺陣ができなきゃどうしようもないでしょう、と。」
2001年の第1回公演「鞍馬天狗異聞」(アゴラ劇場)から、一貫してそういう方針で臨んでいる。芝居の中に殺陣が入るのではなく、殺陣を効果的に見せるために芝居がある、という位置付けだろうか。

トータルで1000人以上の指導

また、先に書いたように、無銘鍛冶としての公演の他に、他の劇団や高校・大学の演劇部などの公演の殺陣の振り付けや指導も行っている。学校の方は、長いところでは10年以上にわたっており、劇団は名の通った劇団から小劇場まで、トータルで1000人以上にはつけているという。
外部の団体の場合、すぐにお手本の型の通りにはできないことが殆どなので、まずは基本の所作から教えることになる。となると、当然問題になるのは、殺陣にどのくらいの稽古時間を割いてもらえるのかということになるが、大抵の団体は、殺陣を作るのにある程度のまとまった時間がかかるという認識がない。本来は、殺陣稽古はダンスの稽古と同じく、演技部分の稽古とは切り離して時間をとるべきで、そうすることで完成度も上がる。しかし、なかなかそうもいかない場合も多い。圧倒的に限られた時間と、役者の殺陣のスキル、そして演出が見せたい方向性という条件の中で、いかに格好良く見える殺陣を作るかが、腕の見せ所というわけだ。

無銘鍛冶の殺陣へのこだわり

無銘鍛冶の殺陣へのこだわりは、細部にも及ぶ。例えば、登場人物の性格や剣の腕、経験等によっても、刀の振り方は当然違う。これを意識して殺陣を作る団体はあまりないと思われる。しかし、無銘鍛冶は、振り方は勿論、刀と刀がぶつかり合う音(SE)の違いにまでこだわるのだ。今や殺陣入りのエンタメの代表格である新感線の殺陣も、ただ綺麗に、格好良く見えるように振っているだけだと、酒井の目には映るようだ。
「殺陣主体」というのは、殺陣のシーンがたくさん入っているというだけではなく、「殺陣による演技・表現」を追究する、より本格派の、殺陣の奥深さを体感できるような作品であるということなのである。

何より無銘鍛冶が重視する「安全」

そして、何より無銘鍛冶が重視するのは「安全」だ。これまで自主公演は勿論、無銘鍛冶が殺陣をつけた団体で、けが人は一人も出ていないという。これは大きな実績だ。
「殺陣は安全が重要なので、それに気を付けつつ、格好良く見せるということの両立に重点を置いてきた」
怪我をしない・させないように、常に相手のことを考える。それも無銘鍛治の殺陣指導のポイントだ。
酒井が前に所属した団体で、実際に殺陣でけが人が出て、公演に支障が出る寸前までいく事態になった苦い教訓を踏まえてのことである。最大のリスクである怪我を回避し、それでいて安パイを踏まずに格好良い殺陣ということを常に意識しているそうだ。

定期稽古には、ホームページを見て応募してきた人や、高校・大学の演劇部員等が参加しているが、殺陣は無経験という人が殆どだそうだ。その中から、無銘鍛冶の公演に出演する人もいる。
「(稽古に)参加すると、必ず一皮むける。稽古でこつこつ積み上げてきて、本番になると、ずっと殺陣をやって来た人に追いつく人もいる」
「稽古を続けて、無銘鍛冶の自主公演にも出ると、基本も見せ方も両方できるようになる。そういう人が一番強い」
殺陣ができるというのは、役者にとってはひとつの武器だ。特に、女性にとってはかなり強力なものとなる。殺陣ができるということで、主要キャストに抜擢されることもある。殺陣は危険だと敬遠する女性も多いが、先にも書いたように、無銘鍛治の稽古は怪我の心配がない。その点では安心して稽古に参加でき、確実にスキルを身につけることができる。

無銘鍛冶はレッスン料

ただ、殺陣は2、3時間やればものになるというものではないので、ある程度の期間は稽古に通い続けることが大事だ。その場合、気になるのはお金の面だが、無銘鍛冶はレッスン料がかなりリーズナブルであるのが嬉しい。一般は1レッスン1500円、学生は1000円。週1回1ヶ月通っても6000円である。月謝制ではなく、行った回数分払う方式であるのも有難いところだ。その辺りも、レッスンを受ける方の立場に立つ、「相手を考える」という無銘鍛治の殺陣の姿勢と繋がっている。習う方から見て、コスパは非常に高いといえるだろう。

待望の新作の上演を予定

無銘鍛冶は、これまで5回の公演を行ってきているが、近々、待望の新作の上演を予定している。酒井の脚本で、新撰組で明治まで生き延びた永倉新八の回顧録的な内容になる予定だ。そして、今度は殺陣を抑えめにするという。つまり、演技(ドラマ)の部分も重視する内容になる。これまでとは少し違った、無銘鍛冶の新しいスタイルの舞台が見られるだろう。今から楽しみである。

無銘鍛治の殺陣には、殺陣を愛するが故のこだわりと、確かな技術に裏打ちされた独特の重厚さとスピード感がある。また、最近、殺陣の稽古中の役者の死亡事故が起きている。安全第一は殺陣の基本だ。その点も無銘鍛治はしっかりと押さえ、活動の中心に据えている。一から殺陣を習得したい人にも、より高いスキルを身に付けたい人にも、安全でスキル的に無理のない、でも格好良い殺陣を入れたい演劇団体にも最適の殺陣集団だ。
勿論、自主公演も見所満載である。
是非一度、無銘鍛治の殺陣を体感して欲しい。そして、もしあなたが役者なら、その殺陣を体現できる力を身につけてみて欲しい。きっと殺陣のある舞台には欠かせない存在になれるだろう。

無銘鍛冶ウェブサイト

製作委員会 小谷陽子

製作委員会 小谷陽子

大学が演劇科で演劇を始める。大学と並んでENBUゼミKERAクラスにも通う。
その後、フリーの役者として小劇場で活動した後、事務所に所属し映像方面でも活動。
8年ほど前に知り合いと演劇系のイベントに出ることになった時にほぼアクシデント的に台本を書くハメになり、その後稽古用の台本などを書くようになる。
役者として活動する一方、5年前から自ら主宰する演劇ユニット「製作委員会」を始める。現在も舞台・映像出演しながら「製作委員会」を元気に細々と継続中。

製作委員会
2010年ころ、小谷陽子が都内で立ち上げた演劇ユニット。いちおうユニットと言ってはいるが実際は劇団ひとりならぬ製作委員会ひとり。現在もゆるゆると活動。

製作委員会公演履歴
2010年10月20日〜10月22日「港町殺人」作/藤尾京子
2012年1月20日〜1月22日
「いちご、マスゲーム、妄想」
2012年11月30日〜12月2日
「悪癖」
2013年5月30日〜6月1日
「がんばれ美香子〜なにそのタイトルやめてよ」
2013年10月19日〜26日
「JFK」
2014年8月1日〜8月3日
「Starting Block」byセミナーズ2013
オムニバス公演に「No more bet」で作/演出/出演として参加
2015年4月7日〜12日
「尼ちゃん」
自主映画
「OH!ぱいパニック」
2015年11月28日アミューあつぎでのイベントで上映予定

 

製作委員会というユニット名は一風変わった名前だ。代表の小谷曰く、その意味するところは、「○○製作委員会」、すなわち、毎回その時の公演の作品名が隠れているのだという。その名前の付け方からも、微妙な力の抜け具合を感じる。
製作委員会がこれまで上演してきた作品(主に小谷作)の作風は、ユニット名の由来に象徴されるように、中心がありそうで、ない。捉え所がなく、意味を求めようとすると掌からこぼれ落ちていく感じなのだ。
「スタイリッシュでも、トレンディでもない。くだらなくて、何も残らないものを目指して作っている」
と小谷は言う。もともとはコメディが好きだが、大笑いするよりも、クスッと笑えるものを作りたいのだそうだ。

そんな製作委員会の作品には、根底に流れる「隠しテーマ」がある。
20代の話や、普通の会社員の話は書かないというのだ。
「今の20代や、普通の会社員のことって、分からない。分からないことは書けない」
と小谷は言う。しかし、それだけではないだろう。彼女の興味関心は、もう少し上の世代にあるようだ。
「30代から40代、50代になったら、もう人生動かない、この後の急展開はないだろうと思う人が多い。面倒くさいし、体力がないということかも知れない。だからどちらかというと、安定を求める方に向かう。でも、ここで固まっちゃうのは辛くないですか?」
自身も30代の小谷は、自分自身の活動にも絡めて言う。
「それは嫌だなって。希望がない。ワクワク感がないというか。何が起こるか分からないと思ってないとつまらない」
「これからは高齢化社会になる。平均寿命が95歳くらいになるかも知れない。そうなったら、30歳超えても、いきなり職業が変わるとか、そんなことはあり得ないって言えますか?だったら、皆さんも何でもやっていきましょう。そのことをお客さんには伝えたい」
くだらなさの追求は、この考え方から導き出された製作委員会の作品の重要な方向性であり、根本を貫く思想だ。
「『この年齢(とし)になっても、こんなくだらないことをやってる』っていうのを書きたい。『この人達、こんなくだらないことをしてバカだな。俺も似たようなもんだけど。これでいけるんだったら、俺ももっといけるだろう』と思って欲しいし、そういう部分を引き出していきたい」
とはいえ、それを声高に主張するわけでもない。
「お客さんがリラックスできる、感動的よりは終始くだらないものを」
という姿勢は一貫している。

また、製作委員会の作品には、ホストやその店の経営者等、小谷の表現を借りれば「隙間産業」の人間が多く登場するのも特徴だ。「JFK」や「尼ちゃん」で舞台になっているお寺も、一般人の世界ではない。その理由を彼女は、
「自分が隙間産業しか知らないからかもしれません。普通の正社員の人たちの美味しいところと不味いところ、という感覚があまり分からないというか。もし分かったとしても書きたくなるのかどうか…」
と言う。彼女にとっては、人生における「意外性」が大事なのだが、それを象徴するものとしてこうした人間達の世界がある。そして、私達は、何かの拍子で自分がそちら側の人間になるかも知れない。その可能性はゼロではない。私達は、製作委員会の舞台を通して、そうした世界をのぞき見ることができる。

製作委員会の活動の他に、小谷は日本劇作家協会主催の「戯曲セミナー」の卒業生有志で構成する「セミナーズ」の公演に、作・演出で参加している。こちらの作品は、オムニバスの1本ということもあり、短編だ。また、「場転なし」「少人数」といった縛りもある。こうした短編の場合は、製作委員会の作品とは違った作り方をするそうだ。
「書かないように、書かないようにする。お客さんに委ねるところが大きい」
さらに、次回のセミナーズの作品は、小谷作品には珍しく「ちょっと真面目なもの」になる予定だとか。新たな「小谷ワールド」の予感。こちらも楽しみである。

役者としても、彼女は製作委員会の作品に出演し続けている。それは、演出として外側から関わるだけではなく、自ら作品の中に入り込んで、その世界を構築していきたいからだという。言ってみれば、「くだらなさ」を自らの演技でも表現しているわけだ。
「(人生は変化があっても)思っているより全然イージー。『あら、こんなもん』ていう感じ」
「これからもバカみたいことをやりたい」
そう繰り返す彼女。そのキリッとした顔立ちからは想像がつかない。
「根が子供なんでしょうね。顔で得してます。『喋ってないと頭良さそう』って言われる」
そう言いながら、彼女は笑った。彼女のしなやかさがにじみ出ているような、柔らかな笑顔だった。

「ネジが1本抜けたような感じ」(小谷)である作品を見て、観客は、自分がネジを締めすぎているのではないかと無意識のうちに気付く。若さを失って、無難に凝り固まっていくことを拒否し、柔軟に、力を抜いて、可能性を信じて人生を送ろう。そんなメッセージが、製作委員会の舞台には込められているのだ。
その意味では、これは小谷流の、普通の形とは違う「人生の応援歌」といえるのかも知れない。

製作委員会は30代、40代の役者を求めているという。
息苦しい日常に疲れ、力を抜いたバカバカしさの表現の中に身を委ねてみたいと密かに思っている役者の方は、連絡を取ってみるといいだろう。
そして、同じように疲れ果て、今後の人生に漠然とした不安を抱いている人は、どの世代であっても、製作委員会の舞台に足を運んで、くだらなさのシャワーを浴びよう。そして、自分のネジを一本抜いてみれば、今までと違った人生が見えてくるかも知れない。
(文中敬称略)

 

製作委員会ウェブサイト

U-33 project

主宰の結城ケン三と声優の中西みなみによって突如発足した演劇ユニット。

u_33_logo
数々の演劇制作を経て、「色々観てきたけど俺の方が面白いし」と言う結城の言葉の元、誕生。
ユニットテーマは「マジくだらない。」
日常、非日常にある不条理に様々な視点でしつこく絡みつく。
「もうめんどくさいからその話いいよ。」と言われても止めない。
「もう何言ってるか分からないからその話いいよ。」と言われても続ける。
「もう静かにしといて。」と言われてやっと黙る。でもすぐに話し出す。
そんなしつこい絡みつきをモットーに日々邁進中。

【構成員】
主宰、作、演出
結城ケン三

U-33 projectは、2015年12月に旗揚げする、生まれたてのホヤホヤのユニットだ。

主宰で作・演出の結城ケン三は、ENBUゼミの江本純子(毛皮族)クラスの出身。もともと脚本家志望だったが、何故かその後バンド活動を経て、演劇には制作スタッフとして関わることになった。2年ほどスタッフ活動に専念していたが、役者である中西みなみとの出会いをきっかけに、自らのユニットの立ち上げを決意した。それが今年の夏である。
中西「何度も聞いたんですよ。本当に今年やるの?って」
結城「今年じゃなきゃだめだって言ってやり始めた。それで、大量のプロットを(中西に)送ったんですよ。」
中西「たくさんありすぎて、何が何だか分からなくなった(笑)でもやりたいことはたくさんあるんだなって。」
表現したいことは相当たまっていたようだ。
結城「でも、芝居は一人ではできない。それで、半ば諦めかけていたんですけど、いい人に出会い、手伝ってくれるということで。あの時の脳みその回転のしようと言ったら…」
中西「浮かれちゃったんですね(笑)」

ユニット名はあるバンドの曲のタイトルだが、「明るいところから暗いところまで振り幅がある」という意味だったのに引っかけて、このユニットでも、そうした作品を上演していきたいという。ちなみに、「33」には構成員の2人の名前「ケン三」と「みなみ」も含まれているそうだが、その他にも、「33歳までに天下を取るぞ!」という決意も込めた。

結城作品のキャッチフレーズは「根暗なコメディ」。
結城「コメディをやりたくて書いてるんですけど、(他人が)読むと暗いみたいなんです。(作品中で)よく人が死ぬんですけど、感動させるような死人の使い方じゃない。死んでも死にっぱなしじゃないし。」
主人公すら死んでしまうそうだ。それも、こんな扱いでいいのか、という感じで。
結城「基本はコメディにしたいけど、完全な(=普通の)コメディではない。」
中西「やりようですね。演出と、あとは役者の技量。」
勿論、作品中には中西に当てて書かれた役もある。

第一弾となる「カレハノ」は、結城としては初の長編作品。最初に出演者で本読みをした時、「演劇っぽくない本ですね」と言われたという。映像的という側面もあるが、ちょっと毛色の変わった作品だと受け止められたのである。
結城は「他人と違ったことをやりたい」という意識が強く、普通のコメディではない、かといってシリアスでもない、そんな肌触りのものを作ろうとしているようだ。
結城「例えば、ここは笑わせどころっていう場所があっても、そういう演技はして欲しくないんですよ。自然な演技で、言い回しだったり、間だったり。友達同士で喋っているときに面白いのと、合コンで面白いのとで分けるとしたら、友達同士の面白さというか。『どや!』っていう感じで笑わせにいくのではない。会話劇みたいにナチュラルにやって欲しい。」
役者にとっては、なかなか高いハードルが設定されている。ベタな笑いではない、全く別の「おかしさ」をそこかしこに散らす、それが結城の目指すコメディの形のようだ。
そして、チラシに書いてあるあらすじは、実はあらすじではないという。
結城「あらすじに書いてある話から一気に関係ないところに話が飛ぶんですよ。でも、そっちの方がメインなので、後半をお楽しみに(笑)」
中西「最初から『おや?』って思うところはあると思う。『そうなる?』みたいな。」
結城「主題は『私達演劇やってます』なんです。」
本人達も説明に苦労していた。観客にとっては、予測不能な展開の連続ということなのか。しかし、あくまでもコメディである。確かに、他にはない不思議な演劇体験ができそうである。
それは、ユニットテーマの「マジくだらない」に通じている。
結城「そういうものって考えなしに見られるけど、難しいことをしようとしている。意味ない台詞を織り交ぜていったり、『そのパターンをここで!?』みたいな。普通に終わらせたくない。」
そして、こうも言う。
結城「いろんな芝居を見てきて、絶対自分の方が面白いと思う。凄い面白い物を見ても、同じくらいのものは書けるな、と常に思っている。」
根拠はないかも知れないが、こういう考え方は創作を行う人間には大事である。「カレハノ」も相当な自信作だと思っていいだろう、多分。

そんな結城の作品世界を構築するのに最適なパートナーとして選ばれたのが、役者の中西みなみ。もともと声優だが、近年は小劇場を中心に多くの舞台に立つ。シリアスからコメディまで幅広い役柄をこなし、どのポジションでも観客に強い印象を残す。そんな中西の舞台を見た結城がコンタクトを取った。
結城「演劇系の知り合いはいるけど、制作の知り合いが多いんですよ。役者で一番仲が良くて、関わることが多くて話が合う。出したプロットでも、『こういう作品が好き』っていうのが合う役者だった。」
中西「私はほぼほぼこの人に任せるつもりですけど。」
結城「でも、たまに言ってくる意見がジャストではまる。自分にはない感覚で面白い。」
中西は「しょうがなく」やっていると言うが、彼女が何気なく発する言葉や発想が、結城の求めているものとぴったり合うということらしい。きっと彼女の感性が、無意識のうちに結城の表現と響き合っているのだろう。実際、「カレハノ」の脚本を読んで、彼女は自分に当てて書かれた役が分かったという。本人は自覚していないが、彼女にとっても案外居心地のいい世界なのかも知れない。

「自分にとっては笑いどころなんですけど、10人いたら1人くらいしか分かってくれないかも知れない。でも、その1人に向けてその笑いを提供したい。それを10パターン作れば、10人が笑える。でも、それは本編としてはいらない(笑)」
つまり、大爆笑と言うよりは、1人1ヶ所はマニアックに笑える部分があるというのがU-33 projectの舞台なのである。
その中で、中西はどんな顔を見せるのか。
興味が尽きない旗揚げ公演である。どのポイントで笑えるのかで、自分の潜在的な笑いのツボが分かるかも知れない。巷に溢れるよくあるコメディに食傷気味なら、U-33 projectの舞台を見てみては如何だろうか。新感覚の「お笑い」の誕生の瞬間に出会えるかも知れない。
ツボにはまると病みつきになりそうな世界の予感がする。
(文中敬称略)

U-33projectウェブサイト